• 高森明勅

天皇陛下の地方へのお出まし

最終更新: 10月31日


産経新聞( 12月18日付)に以下のような記事が載った。

「宮内庁の西村泰彦次長は17日の定例会見で、来年5月の即位後に新天皇、皇后が地方訪問で利用される新幹線について、臨時専用列車を全車両貸し切りとすることを明らかにした。

現在の天皇、皇后両陛下と同じ対応で、西村氏は『一般の乗客への影響などをJRと検討した結果』と述べた。

皇太子ご夫妻は現在、通常ダイヤの一部車両を貸し切りで使われる。 両陛下は上皇、上皇后となった後も、臨時列車を利用される。

航空機も、新天皇、皇后、上皇、上皇后は現在の両陛下と同様、全座席貸し切りの特別機

とする方向で検討している。

一方、皇嗣、皇嗣妃となられる秋篠宮ご夫妻は従来通り、新幹線、航空機ともに

随行の職員や警備関係者を含め、必要な座席分だけを確保して利用される方針」

これは当然であろう。

天皇というお立場は極めて重い。

内閣総理大臣と最高裁判所長官を「任命」し、国権の最高機関たる国会をより

高いお立場から「召集」される。

国会で成立した法律も内閣が決定した政令も、天皇による「公布」を経なければ、

法的効力を持ち得ない等々。

これだけ重いお立場に見合った警備を考えたら当然、これまでの方式を踏襲する結果になる。

ここで参考までに平成16年3月に宮崎県で開催された全国植樹祭への天皇・皇后両陛下のお出まし(行幸啓〔ぎょうこうけい〕)のご様子の一部を紹介しよう。

「4月24日(土)午前9時半、両陛下は住まいの皇居・御所を車で出発された。

…同行するのは宮内庁長官、侍従長、侍従、女官長、女官、侍医、同庁総務課長、同庁職員数人、警察庁長官、警察庁職員数人、皇宮警察本部長、そして両陛下を護衛する護衛官6人らで、彼らの乗った車も一緒に車列になって移動する。

地方訪問の時はいつも同じような構成となる。


…約25分で羽田空港へ。空港には、VIP専用のスポットがあり、そこに貴賓室の建物もある。


車列はそのスポットに直接乗り入れるが、両陛下は貴賓室でほとんど休憩されることもなく、特別機に搭乗される。


タラップを上がる手前には、首相(このときの首相は小泉純一郎氏)、警視総監(警視庁のトップ)、宮内次長(長官に次ぐナンバー2)、訪問県である宮崎県の東京事務所長らが立っており、あいさつを受けられる。


…国内訪問の際は日本航空や全日空など民間機の小型機を特別機としてチャーターするが、

このときは全日空が担当した。同機には同社の社長も搭乗し、往復とも、到着時に両陛下がタラップを降りる際の先導役となる。

…午前11時40分、宮崎空港に到着。

タラップを降りると宮崎県知事、同県議会議長、同県警本部長、宮崎市長、

同市議会議長、宮崎空港ビル社長が出迎え、あいさつを受けられる。


地元の県・市の代表のあいさつというパターンはどこへ行っても同じである。

なお、ここから帰りの特別機に乗られるところまでの日程を通して、県知事と県議会議長は、終始、同行する(「随従〔ずいじゅう〕する」という)。


県知事は、地元だから、自宅から通(かよ)って合流することもできるが、両陛下のご滞在中は同じ宿(ホテル)に泊まり、車も一緒の車列に組み込まれて移動する。…」(山本雅人氏『天皇陛下の全仕事』)

首相がタラップまでお見送りに出て、全警察組織のトップである警察庁長官が終始同行し、

航空会社の社長が先導役をして、地元の知事が同じホテルに泊まってまで“おもてなし”に徹する。


これらの事実は一般に見落とされているかも知れない。

だが、まさに「日本国」および「日本国民統合」の「象徴」という地位の重さに相応しいご対応と言うべきだろう。

なお地方へのお出ましの際は、およそ西は京都までが新幹線で、大阪以西は飛行機、東北は山形まで新幹線、秋田なら飛行機、甲信越なら新潟・長野は新幹線、北陸方面は飛行機というのが大体の目安のようだ。

皇太子殿下の場合は、飛行機ならスーパーシートを利用され、その後方に宮内職員や皇宮護衛官、宮内記者らが座る。

一般客はバスで専用スポットまで運ばれ、宮内記者らの更に後方の席に座る。

新幹線だと皇太子(同妃両)殿下専用に貸し切りにしたグリーン車に乗られ、その前後1両ずつ、計3両を貸し切りにする。

秋篠宮殿下の場合は、皇太子殿下がご即位後も、次の天皇であることが原則、決まっている「皇太子」ではなく、直系の皇嗣(皇太子又は皇太孫)が不在(又は制度上“不在”)なので、その状態が続いている間は皇地継承順位が第1位、というお立場。

傍系の皇嗣であって、内廷“外”の「宮家」の皇族であることにお変わりはない。

よって、ご本人のご意思が尊重される余地もあり、従前の例がそのまま踏襲される事になったのだろう。

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