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執筆者の写真高森明勅

天皇陛下のおことば

「天皇誕生日」に際してのおことば。 ご譲位について次のように触れておられた。


「この度、再来年4月末に決定した私の譲位については、 これまで多くの人々が各々の立場で考え、 努力してきてくれたことを、心から感謝しています」と。 ハッと胸を打たれた。


皇后陛下は先頃、ご自身のお誕生日に当たり、 ご譲位を巡って次のように仰っていた。


「陛下の御譲位については、多くの人々の議論を経て、 この6月9日、国会で特例法が成立しました。 長い年月、ひたすら象徴のあるべき姿を求めて ここまで歩まれた陛下が、御高齢となられた今、 しばらくの安息の日々をお持ちになれることに 計り知れない大きな安らぎを覚え、 これを可能にして下さった多くの方々に

深く感謝しております」と。


ご譲位を可能にする法整備のプロセスについて、 詳しくご存じでいらっしゃる事が如実に窺える。


「人々」と「方々」という厳格な区分もされていた。


私なぞはそれぞれ、 政界及び民間の具体的な個人名さえ、 何人かずつ浮かんでくる。 実に細やかなお心の配り方だ。

まさに皇后陛下ならでは。 この度の陛下のおことばは、 そうした経緯を委細ご存じの上で、 「多くの人々が各々の立場で考え、努力してきてくれた」と、 大きく包み込んでおられる。 陛下のお気持ちに背こうと企(たくら)んだ、 一握りの国民から孤立した者どもさえ、 温かく抱き締めるようなおことばだ。


果てしない寛大さ。


「国民統合の象徴」とは、 このようなご存在なのか。

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