• 高森明勅

令とは善なり

私は漢字については全く素人。


だからその“由来”を探る場合は、

専ら藤堂明保『漢字語源辞典』『学研漢和大字典』、

白川静『字統』『字通』などに頼る他ない。


この度発表された新元号の「令和」に含まれる「令」について。


藤堂『語源辞典』の説明は以下の通り。

「人を集めて屈伏させることを表した会意文字で、

何かをいいつけて、従わせることを示している。

…令には神よりのものと、首長よりのものがある。

歴史的に考えると『神の令』の方が先であろう。

…令の基本義を…〈爾雅(じが)…〉に

『令とは善なり』とあるが、さらに正確にいえば、

令とは澄んで汚れなく、きれいなことである。

神々のお告げは汚れなく清い。

…令室・令兄のような敬称に用いられるのも、

その名ごりである。

玉の清い音を玲(れい)といい、

鈴(すず)の清(す)んだ音に着目して鈴(れい)

といい、汚れない氷を冷(れい)という。

清い音楽を奏する楽人(がくじん)を伶(れい)という」と。


漢字を理解する場合、

漢の許慎(きょしん、西暦30年生まれ124年に没)

がまとめた『説文解字(せつもんかいじ)』

(『説文』と略す)が長く“聖典”視されて来た。

勿論、藤堂博士も多く依拠されている。

ところが白川博士は、『説文』の権威を相対化し、

より時代が遡(さかのぼ)る甲骨文(卜文)や

金文を重視された。その『字通』の説明は以下の通り

(一部『字統』の記述を補う)。


「(『説文』の説明は)政令を発する意とするが、

卜文・金文の形は、神官が目深(まぶか)く礼帽を

著(つ)けて跪(ひざまず)く形で、神意を承(う)

ける象(さま)とみられる。

令・命は神意に関して用いる語である。

神意に従うことから令善(令とは善なり―引用者)

の意となり、(令名〔れいめい=名声〕・令聞

〔れいぶん=よいほまれ〕のように用いる

―『字統』より)また命令の意から官長の名、

また使役の意となる」。


『爾雅』(最古の字書、漢代の初期以前に成立)

に「令とは善なり」とあったのを知れば、

令和の出典にある“令月”が「万事をなすのによい月、

めでたい月」とされる理由も、理解できるだろう。

「令夫人」「ご令嬢」といった言葉なら、

私も日常生活で使っている。




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