令とは善なり

​更新日:2019年6月20日

令とは善なり

私は漢字については全く素人。だからその“由来”を探る場合は、専ら藤堂明保『漢字語源辞典』『学研漢和大字典』、白川静『字統』『字通』などに頼る他ない。

 

この度発表された新元号の「令和」に含まれる「令」について。

藤堂『語源辞典』の説明は以下の通り。

 

「人を集めて屈伏させることを表した会意文字で、何かをいいつけて、従わせることを示している。…令には神よりのものと、首長よりのものがある。歴史的に考えると『神の令』の方が先であろう。…令の基本義を…〈爾雅(じが)…〉に『令とは善なり』とあるが、さらに正確にいえば、令とは澄んで汚れなく、きれいなことである。神々のお告げは汚れなく清い。…令室・令兄のような敬称に用いられるのも、その名ごりである。玉の清い音を玲(れい)といい、鈴(すず)の清(す)んだ音に着目して鈴(れい)といい、汚れない氷を冷(れい)という。清い音楽を奏する楽人(がくじん)を伶(れい)という」と。

 

漢字を理解する場合、漢の許慎(きょしん、西暦30年生まれ124年に没)がまとめた『説文解字(せつもんかいじ)』(『説文』と略す)が長く“聖典”視されて来た。勿論、藤堂博士も多く依拠されている。ところが白川博士は、『説文』の権威を相対化し、より時代が遡(さかのぼ)る甲骨文(卜文)や金文を重視された。その『字通』の説明は以下の通り(一部『字統』の記述を補う)。

「(『説文』の説明は)政令を発する意とするが、卜文・金文の形は、神官が目深(まぶか)く礼帽を著(つ)けて跪(ひざまず)く形で、神意を承(う)ける象(さま)とみられる。令・命は神意に関して用いる語である。神意に従うことから令善(令とは善なり―引用者)の意となり、(令名〔れいめい=名声〕・令聞〔れいぶん=よいほまれ〕のように用いる―『字統』より)また命令の意から官長の名、また使役の意となる」。

 

『爾雅』(最古の字書、漢代の初期以前に成立)に「令とは善なり」とあったのを知れば、

令和の出典にある“令月”が「万事をなすのによい月、めでたい月」とされる理由も、理解できるだろう。「令夫人」「ご令嬢」といった言葉なら、私も日常生活で使っている。

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