大嘗祭「斎田抜穂の儀」違憲訴訟の顛末

​更新日:2019年5月18日

平成の大嘗祭で、新穀を献上する悠紀(ゆき)・主基(すき)両地方の田んぼでの収穫行事、「斎田(さいでん)抜穂(ぬきほ)の儀」が行われた(悠紀は平成2年9月28日、主基は同10月10日)。

 

この時の悠紀地方は秋田県、主基地方は大分県だった。儀式には、両県とも知事らが参列した。これに対し、大分県では知事らの参列を憲法の「政教分離」違反とする訴訟が起こされた。提訴は大嘗祭翌年の平成3年1月25日。原告は牧師、弁護士らを含む県民37人。請求内容は以下の通り。

「『抜穂の儀』に知事や副知事、農政部長らが参列し、祭壇に向かって拝礼したのは宗教的活動にあたり、憲法の定める政教分離原則に違反するため、知事らに支給された日当や旅費、随行県職員祭典中の給与計2万8千512円を返還するよう求める」地裁は原告の請求を棄却した(平成6年6月30日)。その理由は以下の通り。

「主基斎田抜穂の儀は、その意義、内容及び形式からして、広い意味で神式の儀式であり、宗教的儀式と見られるから、被告らの参列が宗教とかかわり合いを持つものであることは否
定することができないものの、天皇は日本国憲法上、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴と定められており、大嘗祭は皇位継承に必要かつ重要な儀式の1つである。

 

大嘗祭は、特定の宗教、宗派の普及、拡大を目的とするものではなく、また、知事らの参列も主基斎田抜穂の儀の挙行地において重要な公職にある者の社会的儀礼として、新天皇への祝意を表す目的で行われたのであって、単に拝礼したにとどまり、主基斎田抜穂の儀の進行等につき積極的にかかわり合いを持っていない。被告らの主基斎田抜穂の儀への参列は、その目的は、新天皇の皇位継承儀式の関係儀式に際し、新天皇に祝意を表するという、専ら世俗的なものであり、その効果も、新天皇に祝意を表する以上に、特定の宗教を援助、助長、促進又は圧迫、干渉を加えるものとは認められないから、憲法20条3項による宗教的活動には当たらない」

 

原告は高裁に控訴して棄却された(平成10年9月25日)。更に最高裁にも上告した。

だが、これも棄却されて、敗訴に終わった(平成14年7月9日)。最高裁の判決要旨は以下の通り。「主基斎田抜穂の儀は大嘗祭の一部を構成する一連の儀式の1つとして皇室の伝統儀式としての性格を有している。

知事らの参列目的は、地元で開催される天皇の即位に伴う伝統儀式に際し、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇に対する社会的儀礼を尽くすというものであり、その効果も、特定の宗教に対する援助、助長、促進、又は圧迫、干渉等になるようなものではない」今年の9月上旬~10月上旬頃には、栃木県・京都府で「抜穂の儀」が行われるはずだ。

その時には、地元の知事らが天皇陛下のご即位への祝意を表す為に、堂々と参列されるだろう。

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