
「皇統」という価値
大東文化大学名誉教授の工藤隆氏の近刊『女系天皇』(朝日新書)。 太めの帯には「男系男子継承絶対主義は、幻想だ!」という大きな文字が踊る。本書中に以下のような一節があった。 「明治政府が選択した男系男子継承絶対主義は、実は唐風文化模倣によって形成されたものなのに、21世紀初頭現在の女系天皇否定論者のように男系男子継承こそが天皇制の核心だと絶対化しすぎると、もともとは国粋主義のつもりで主張していたはずなのに、実は皮肉にも中国文化偏愛主義になっていることに気づくべきである」と。 いささか刺激的な表現ながら、私が従前「やまとごころ(日本固有の女性尊重、双系の伝統)」「からごころ(シナに特徴的な男尊女卑、男系絶対)」という言葉で整理して来た論点とも重なって、共感できる見方だ。 但し、全体の論述については、(ご本人のフィールドワークに基づく記述には有益な示唆も含むが)先行研究への目配りや史料の扱い方など、一般書とはいえ学問上の手続きにおいて、そのまま支持できない部分を見掛ける。 又、締め括〔くく〕りの「提言」に、「女系継承(婿入り)の許容だけでなく〔血のつな