高森明勅

2019年5月1日2 分

新しい天皇陛下の「イギリス議会」体験

最終更新: 2019年5月6日

新しい天皇陛下の「イギリス議会」体験
 

新しい天皇陛下のお若き日のご著書『テムズとともに』
 
(平成5年刊、学習院教養新書)。
 

 
イギリスでの2年間の留学体験をまとめられている。
 
その中に次のような記述がある。
 

 
「到着翌日の6月22日には、英国議会の開会式を見学した。
 
式は、エリザベス女王陛下、御夫君のエディンバラ公フィリップ殿下の
 
ご臨席のもとに、上院においておごせかに行われた。
 
まず、きらびやかな礼装に身を包んだ上院議員が整列する中、きわめて
 
フォーマルな装いの女王陛下とフィリップ殿下が入場される。
 
やがて、女王陛下からの使者が下院に赴き、発声とともにドアを叩く。
 
下院では開けたドアを使者の前で閉めてこれを拒絶すること2回。
 
3回目にようやく開け、下院議員全員が上院に向かう。いわば女王陛下の
 
使者に三顧の礼をつくさせるわけであるが、私はこの一連の所作に、
 
ピューリタン革命にまで遡る、王権から自立した、議会を主体とする
 
政治の理念が表されている思いがした。
 

 
ほどなく式場に現れた下院議員の服装は平服である。
 
その中にはサッチャー首相の姿もあった。
 
…議会の開会式見学は、私にとって『伝統の国イギリス』を実感する
 
最初の機会であった」
 

 
― 我が国の議会、つまり国会を構成する議員諸氏に、
 
果たして政治の“主役”としての責任感がどこまであるだろうか。
 

 
それにしても、お若くして「女王陛下の使者に三顧の礼をつくさせる」
 
下院の所作に頼もしさを感じられた、天皇陛下の懐の深さに驚く。

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