高森明勅

2018年11月26日2 分

安倍政権の移民政策、「介護」を直撃

安倍政権は外国人労働者(=移民)

の受け入れ拡大にハッキリ舵を切ろうとしている。
 

移民受け入れ分野の第1が「介護」。


 
今のところ平成31年からの5年間で、

5万ないし6万人の受け入れを見込んでいるようだ。


 
だが、

実際にはもっと多くなると見ておく必要があるだろう。


 
何しろ人材不足数の見込みは30万人とされているからだ。


 
しかし介護にとって、取り分け大切な意味を持つのは

“コミュニケーション”。


 
私の老母もデイケアサービスのお世話になっている。


 
だから、その事は実感としてよく分かる。


 
コミュニケーションが成り立つ為には、

言う迄もなく「言葉」と「感性」が重要な基盤となる。


 
移民にそれを過大に期待する訳にはいかないのは勿論だ。

にも拘らず、介護を大幅に移民に頼る政策には違和感が強い。


 
介護分野が極端な人手不足に悩んでいるのは周知の事実。


 
しかし、一方で介護福祉士の登録をしながら、

実際には介護職に携わっていない人が、

50万人以上もいる。


 
平成25年時点で登録者数が1,189,979人

なのに対し、実際の従事者数は僅か660,546人。


 
従事率は55.9%しかない。


 
多くの人が介護福祉士の登録をしながら

介護職に従事していないのが実情だ。


 
その理由は一概に言えないだろう。


 
しかし、介護職が精神的・身体的な負担の大きさに

比べて収入が低いなど、就労条件に問題を抱えている
 
事実は軽視できない。


 
同年調べで、常勤者の平均賃金が、

全産業の32万4千円に対し、

福祉施設介護員の場合は21万8千9百円。


 
そこを改善して、介護福祉士に登録している人達が、

積極的に介護職に従事して貰えるように取り組むのが、
 
先決ではないか。


 
来年からの5年間で不足すると

見込まれている人数分をはるかに越える

介護福祉士が、既に国内に存在するのだから。


 
安倍政権がそれをしないで、

大急ぎで移民に頼ろうとしているのは、順序が逆だ。


 
そんなやり方は、

何より移民を“安く使える”労働力としか見ていない証拠。


 
介護分野への移民の受け入れを拡大して行けば、

介護従事者の賃金はより低くなる恐れが強い。


 
介護現場の就労条件の劣悪化は当然、

介護される側にも跳ね返って来る。


 
誰もが当事者になり得る問題だ。

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