高森明勅

2018年6月19日2 分

アメリカの「核の傘」は実在するか?

フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏。
 

最近、日本が核兵器を保有すべき事を、再び訴えている。


 
「米国は、核兵器を持った相手(北朝鮮)とは交渉し、

核兵器を諦めた相手(イラン)には攻撃的に出ている。

…『米国と和平的交渉をしたいならば、核兵器を持った方がいい』

というメッセージを全世界に向かって発しているも同然です。

米国は、核拡散を奨励する外交を展開している」


 
「イラン核合意の破棄は、意図せずとも、

北朝鮮にはこれ以上ないほど直接的なメッセージとなって伝わります。

イランは合意を順守していたのに、米国はそれを一方的に破棄した。

この様子では、米国の言うことは信用できない、と」


 
「もし北朝鮮の指導者がバカでなければ…

米国を決して信用しないでしょう。

…このままでは北朝鮮は決して核兵器を捨てようとは

しないはずです」


 
「核は例外的な兵器で、これを使用する場合のリスクは極大です。

ゆえに、核を自国防衛以外のために使うことはあり得ません。

例えば、中国や北朝鮮に米国本土を核攻撃できる能力が

あるかぎりは、米国が、自国の核を使って日本を護る

ことは絶対にあり得ない。

…要するに、『米国の核の傘』はフィクションにすぎず、

実は存在しないのです」
 

「私は平和を愛好する者であり、
 
フランスではラディカルな左翼と目されている者ですが、

核保有によって平和と安全を確保しているフランスの人間

として、そして日本の友人として、日本もみずからの安全

を確保するために核保有を検討してもいいのではないかと

思った」


 
「米国の狂乱状態は単なるアクシデントや偶然というより

構造的なもので、恒常的に続く可能性が高いと思います。

つまり、米国は、信頼できる安定勢力ではなくなりつつある」
 

「核の保有は、攻撃的なナショナリズムの表明でも、

パワーゲームのなかでの力の誇示でもありません。

むしろパワーゲームの埒外(らちがい)に自らを置くこと

を可能にするのが核兵器です」と―。


 
傾聴に値する発言だろう。

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