高森明勅

2018年2月21日2 分

ご譲位に伴う儀礼

政府が今上陛下のご譲位に伴う儀礼の在り方について
 
方針を明らかにした(政府の用語は「退位」)。
 

 
私が予想していた線から大きくは外れていない。
 

 
特に私が気していたのは、神聖な神器

(じんぎ、皇室経済法では「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」)

である「剣璽(けんじ=宝剣と神璽)」の扱い方。

一時、来年4月30日の退位の儀式で、そのまま剣璽を宮殿に
 
“置き去り”にする(陛下が神器を手放される)という仰天のプランが、
 
政府内部で検討されていた。

これは畏れ多くも、まだ在位されている天皇陛下から、

政府が神器を“取り上げる”に等しい。

「皇位は神器と共にあり」という古来の鉄則を、敢えて踏みにじる暴挙。

到底許されない。


 
さすがにそんな馬鹿げたプランは、当然ながら消え去った。
 

 
しかし、たとえ一瞬でも、そうしたプランが浮上していた事実と、
 
政府関係者の底無しの無知さ加減に、殆ど戦慄を覚えた。
 

 
各メディアの報道の中で、『産経新聞』(3月21日付)は
 
相変わらず、“本末転倒”の説明を押し通している。
 

 
剣璽等承継の儀を「天皇の印『御璽(ぎょじ)』、国の印章
 
『国璽(こくじ)』などを継承する」と(印と印章の不統一もそのまま)。

孤高(!?)の無知ぶり。

誰か教えてやってくれ、と思う。
 

 
読者が気の毒だ。

この新聞に校閲部は無いのか。

『日本経済新聞』はわざわざ「剣璽等承継の儀」について用語解説している。

「皇位継承の中心となる儀式。
 
歴代天皇に伝わる三種の神器のうち剣と璽(じ=まがたま)、
 
公務で使う天皇の印の御璽、国の印の国璽が新天皇に引き継がれる。
 
…残る神器の鏡は伊勢神宮にある」と。

親切な説明だ。
 

 
でも残念ながら「残る神器の鏡は…」の部分は舌足らず。

「神器の鏡」は宮中にもあるからだ。

念の為に整理しておくと、(少しややこしいが)

三種の神器は5つある。

先ず(1)鏡が伊勢神宮(三重県)の

ご神体(しんたい)の神鏡(しんきょう=ご本体)と

宮中三殿(皇居内)の賢所(かしこどころ)に祀られる

宝鏡(ほうきょう=ご分身)。

次に(2)剣が熱田神宮(愛知県)に祀られる神剣(しんけん=ご本体)

と御所(皇居内)の「剣璽の間」に奉安されている宝剣(ほうけん=ご分身)。

(3)玉は同じく「剣璽の間」に奉安されている神璽(しんじ=ご本体のみ)。

以上だ。

今後も、政府の取り組みとメディアの報道の仕方に、目を光らせよう。

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