高森明勅

2020年12月2日2 分

「皇女」プランの非人道性

最終更新: 2021年1月24日

12月1日は天皇・皇后両陛下のご長女、敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下の19歳のお誕生日だった。心からお慶び申し上げる。お健やかなご成長は尊く、嬉しい限り。

両陛下から、様々なものを確かに受け継いでおられるご様子が拝され、国民として誠に有難い。

ところが、政府は長年、懸案になっている皇位の安定継承について、真剣な取り組みを又々回避しようと図っている。先頃、政府が検討していると報じられた「皇女」制度案。それが皇位の安定継承にも皇室の存続そのものにも全く無縁であり、憲法上も人道上も深刻な問題を抱えている事実は、既に指摘した。

ここでは、更にその非礼さ、非人道性について、付け加えて言及しておく。

まず、その「皇女」という尊称。天皇の娘に当たる方だけをお呼びする呼称を、そのまま尊称として、元皇族だった女性の誰にでもに当て嵌めるというやり方は、非礼、不敬以外の何ものでもない。

先ず、天皇・皇后両陛下に非礼だし、真正な皇女たる敬宮殿下にも非礼であり、それ以外の未婚の女性皇族方にとっても侮辱だろう。

その上、「皇女」という尊称さえ振りかざせば、既に皇族ではいらっしゃらなくても、愚昧な一般民衆どもはさぞかし有難がるだろう、という政府サイドの国民を蔑んだ態度が、透けて見える。

しかも、こんな皇室の専門知識“以前”の、国語の基礎学力を疑われるような言葉の間違った遣い方をして恥じない事実から推測して、首相官邸の役人達は、宮内庁には全く照会していないはずだ。

勿論、宮内庁の見識に万全の信頼を寄せることは出来ないにしても、ここまでお粗末かつ非礼な用語法を、さすがに見逃すことはないだろう。「それは“詐称”の非難を受けますよ」くらいのアドバイスはするに違いない。宮内庁に照会していないと言うことは、何より当事者でいらっしゃる皇室の方々のお考えやお気持ちを、内々にでも、一切伺っていないし、伺うつもりもないことを、示している。

国民を蔑視しているだけでなく、皇室(特に、ご自身の人生を左右されかねない未婚の女性皇族方)に対して最低限の配慮すら、払われて“いない”と判断できる。ここまで来ると、既に「非礼」というレベルを超えて、やはり人道上の問題と言わざるを得ない。

それとも政府は、皇室の方々には非人道的な振る舞いがいくらでも許される、と高を括っているのか。

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