高森明勅

2019年4月24日2 分

皇太子と皇嗣

最終更新: 2020年12月28日

5月1日に皇太子殿下が即位されると、同じ瞬間に秋篠宮殿下が「皇嗣」となられる。

皇太子というお立場と皇嗣はどう違うか。

皇太子は次の天皇になられるべき方。

その地位は揺るぎないし、揺るがしてはならない。

ところが、皇嗣はやや違う。

たまたま、その時点で皇位継承順位が第1位であるに過ぎない。


 
例えば、昭和天皇の弟宮だった秩父宮の場合。

昭和天皇が即位されて、内親王が続けてお生まれになった。

天皇に男子がお生まれになるまでの間、皇位継承順位の第1位は秩父宮だった。

つまりその間、秩父宮は「皇嗣(儲嗣)」であられた。


 
しかし、今上陛下がお生まれになった瞬間、皇嗣の立場を離れられた。
 

 
言うまでもなく、今上陛下がご誕生の瞬間に「皇太子」となられたからだ。

皇嗣という立場の相対性、不安定さがよく分かるだろう。

従って、普通、「立太子礼」はあり得ても、巡り合わせでその立場になったのを“こと改めて”公示する、「立皇嗣礼」などという儀礼は考えられない。


 
今の制度のままでも、理論的な仮定として新しい天皇にもし男子がお生まれになったら、

その瞬間に秋篠宮殿下は皇嗣ではなくなる。

恐らく首相官邸の役人は、「立太子礼」の前例があるから、歴史的な知識もなく、深く考えもしないで、惰性的に「立皇嗣礼」なる前代未聞の儀礼をひねり出したのではないか。


 
来年4月に挙行が予定されている。

それは客観的には、政府がもはや直系の男子が生まれないと一方的に認定するという、

非礼な意味以外は持ち得ない。

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