​天皇の3つのお立場 

​更新日:2020年1月7日

​※2019年5月19日に発売された「上皇陛下からわたしたちへのおことば」あとがきより掲載

天皇には次の3つのお立場がある。

1,皇祖(天照大神)の「系統と精神」の正しい世襲継承者

2,国家の公的秩序の頂点

3,国民結合の中心

これらのうち、2は憲法1条に規定する「日本国の象徴」にあたる。

内閣総理大臣や最高裁判所長官を“任命”したり、国会で成立した法律を“交付”して法的有効性を担保するなど「国事行為」は、この「日本国の象徴」=国家の公的秩序の頂点としての“務め”だ。

しかし、国事行為は原則として国民との“接点”がない(唯一の例外は2019年10月22日に予定されている「祝賀御列の儀」。)

だから、国事行為のみでは3国民結合の中心=「日本国民統合の象徴」としての役割を果たせない。そこで上皇陛下は、憲法に規定されていない“国民に寄り添う”ご活動(象徴としての公的行為)を積み重ねてこられた。

大規模な自然災害があった地域になるべく早い時点でお出ましになり、被災者をやさしいくお見舞いされたのは、その最も印象深いご活動だ。このことによる上皇・上皇后両陛下のご心身のご負担は、私どもの想像を絶したものだったはずだしかし、ご自身のことは顧みられず、ひたすら人々のためにご献身くださった。

1は,憲法2条に規定する「世襲」の正当な継承者としてのお立場だ。

このお立場でのお務めは何か。

皇祖や皇室の代々のご先祖、神々への「祭祀」。

それこそが皇祖の継承者として欠かせないお務めだ。

この皇室祭祀は、祭祀(宗教者)としての祭祀ではない。

国家秩序の頂点であり、国民結合の中心としての祭祀だ。

だから、それは「国のため」「公のため」「国民のため」の祭祀にほかならない。祭祀では、つねに奉仕者が無私であり、清浄であり、謙虚である事が求められる。

そのような祭祀を日々、慎み深く繰り返されることで、常人には持ちえない気高い“オーラ”

を、おのずと身にまとわれることになる。

そのような無私のオーラをみにまとわれた陛下がお見舞いされることで、苦しく辛く悲しい思いをしている人々も“癒やし”と“慰め”と“励まし”を感じ取ることができるのだ。

御代替わりに行われる皇位継承儀礼は、これら3つのお立場の新天皇へのご継承をたしかめる意味を持つ。

①剣璽等(けんじとう)承継の儀(と賢所の儀)=「三種の神器」(八咫の鏡・草薙剣・八尺瓊勾玉)を新天皇が受け継がれる。1のお立場を確認する。(2019年5月1日に行われた)。

②即位礼正殿の儀=「高御座」に昇られて即位の事実を内外に宣明される。2のお立場を表示される(2019年10月22日に予定されている)。

③大嘗祭=「民の稲」(国民が育てた稲)を天皇が皇祖に供え、ご自身も召し上がる。3のお立場を証明する。(2019年11月14.15日に予定されている)。

126代目の皇位を受け継がれた今上陛下は、「皇太子」として最後のお誕生日に先立つ記者会見(平成31年<2019年>2月21日)で次のようにおっしゃっておられた。

「引き続き自己研鑽に努めながら、過去の天皇のなさりようを心にとどめ、国民を思い、国民のために祈るととともに、両陛下がなさっておられるように、国民に常に寄り添い、人々と共に喜び、あるいは共に悲しみながら、象徴としての務めを果たしてまいりたいと思います」

上皇陛下が築かれた「国民につくす」天皇像を、新しい天皇陛下らしく受け継いでゆかれることになろう。

令和元年5月 高森明勅

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